水分を摂り過ぎてしまうことにより引き起こされる中毒症の一種のこと。
過剰に水分を摂取することにより体内の水分バランスが崩壊し、細胞の膨化が起こす。体がむくみ、血中ナトリウムイオン濃度が低下し、低ナトリウム血症を招き、中毒症を発症することになる。統合失調症に発展したり、最悪の場合は死亡する。
・130mEq/L
軽度の疲労感
・120mEq/L
頭痛、嘔吐、精神症状
・110mEq/L
性格変化や痙攣、昏睡
・100mEq/L
神経の伝達が阻害され呼吸困難で死亡
原因・・・過度の水分摂取。腎臓の利尿速度は最速で1分間あたり16mlとされているが、この速度をオーバーするペースで水分を摂ると、体のなかで余計な水分が多くなり、細胞の膨化が起こり、血中ナトリウムイオン濃度が低下してしまう。
薬の副作用によっても水中毒の原因になってしまうことがある。抗精神病薬を使用している患者は、副作用として多飲になる。これにより水中毒が引き起こされてしまうケースもある。下痢の症状などにより酷い脱水症状を招いて場合、過剰にスポーツドリンクを摂取すると水中毒を起こすことがある。
症状・・・血中ナトリウムイオン濃度が低いほどに酷い症状が引き起こされるのが特徴。体内に溜め込まれた水分が体を冷やし、胃腸機能を低下させるほか、軽度の症状であれば、軽い疲労感、頭痛、嘔吐の症状が引き起こされる。血中ナトリウムイオン濃度が低下してしまうと、性格が変動したり、神経が過敏になったり、注意力が散漫になったりする。痙攣、昏睡といった症状を招き、最悪の場合は神経伝達が妨げられ、呼吸困難などが原因となって命を落としてしまう。腹部を軽く叩いた場合に水の音がしたり、下腹部だけが出ている、下半身太りの体型になっているという人は水中毒を疑ったほうがよい。
検査、診断・・・血液検査が一般的。血中ナトリウムイオン濃度を測定し、低下具合を確認する。
必要に応じて抗利尿ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンの検査、腎機能検査や血液ガス分析が選択されることもある。
治療・・・水分摂取量を厳しく制限、水分の排泄を促す治療方法が行われる。
精神疾患の場合は原因を明確にした上で投薬治療が選択されることになる。尿崩症の治療薬により水中毒が引き起こされてしまっている場合は、薬の使用をやめることで対処する形になる。
水中毒を引き起こさないために体を動かす機会が多い人や肥満体型の人は1日2㍑、そうでない人は1.5㍑を適量とし、水分摂取量を多くし過ぎないように注意する。尿意を催したら我慢せず、排泄する。
多飲水の早期発見
頻回にトイレに行く、尿失禁の有無、食欲の低下、嘔吐、下痢(消化器機能)、顔面の浮腫、体重増加(水分貯留による)
水の飲みすぎ(消化器症状)…嘔吐、悪心、めまい、胸やけ、胃もたれ
水分貯留…むくみ(下肢、顔面、腸管)頻尿、夜尿、尿失禁、下痢
飲水パターン
①常にコップを持って行動 ②水道などの水源から離れようとしない ③あおるように飲水 ④飲水に夢中になり止める様子がない ⑤注意しても飲み続け、怒って反抗してくる(強行飲水) ⑥見えないところで人目を避けて水を飲む(隠れ飲水) ⑦ポータブルトイレに貯まった自分の尿、水溜りの水を飲む(汚染飲水)
飲水が多い時間帯、飲水の誘因は何かを考える。
体重測定
ベース体重…飲水前の体重。採血データにおいて血清ナトリウム値が正常範囲を示している場合はその体重がベースになる。採血の結果が低ナトリウム血漿を示していればその体重は水を飲んだ後のものであることがわかるのでそれを勘案してベース体重は採血時の体重より低めに設定する必要がある、
リミット体重…超過しない為の目標体重。体重が4~5㌫増加した場合、血清ナトリウム値は10mEq/L以上低下し、水中毒の高リスクの状態を示唆している。『ベース体重+5㌫増加分』を目安に設定する。普段から水を飲み(水耐性)になっている場合は基礎ナトリウム値が低いことに慣れており異常がみられないことが多くある。
危険な状況…飲水により体内に摂取した水分が、排泄能力を上回り貯留し、起床時の体重が毎日増加していて、急激な飲水を行った場合。起床時の体重の変動を日々注意深く観察し、水分貯留に留意する。『短時間での急激な飲水が危険』飲水の量よりも時間が大きく関係してくる。
体重測定の時間…朝、夕の2回では日中の細かい体重変動がわからないので朝、昼、夕の3回行う必要がある。6時半、13時半、19時半 排尿を済ませ、食前に行う。
NDWG(日内体重変動率)
X時のNDWG=(X時の体重-朝の体重)/(朝の体重)×100
通常±1~1.5㌫に収まるが2㌫、3㌫以上になると多飲水が考えられる。
ナトリウムの正常基準[135~145mEq/L] カリウム正常値3.7~4.8mEq/L
採尿
尿比重1.007以下、尿浸透圧290mOsm/kg以下なら多い尿の中でも溶質ではなく水そのものが多い状態である。
1多飲症患者の経過
多飲症期…精神科疾患の発症後5~10年してから出現。
多飲による腹部膨満感、胃のもたれ、むかつき、吐き気、嘔吐、めまい、水分貯留に伴うむくみ、下痢、柔便、頻尿、失禁
2低ナトリウム血漿期…多飲症を呈するようになってから5~10年後、低ナトリウム血症による水中毒を起こすようになる。
ぼんやり、いらいら、頭痛、体のだるさ、筋肉の引きつれ、脱力感、運動失調、激しい嘔吐、大量の尿失禁、もうろう状態、けいれん発作、意識障害(混迷、昏睡)精神症状悪化
3身体合併症…大量の水分が摂取している状態が長年続いた結果、身体合併症を呈する状態
骨粗鬆症、尿管、腸管、膀胱の拡張、水腎症、心疾患
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